ベランダの雨漏りの原因とは、床の防水層の傷み、防水層の立上りと掃き出し窓の下の取合い、排水口やオーバーフロー管の詰まりと不具合、笠木の継ぎ目やビス穴、手すり壁と外壁の境目など、雨水の入り口になる場所の不具合のことです。入り口は1か所とは限らず、入った水が伝って離れた場所に出ることもあるため、漏れた日の雨の降り方や外から見えるサインと合わせて候補を絞ります。
「ベランダの下の部屋の天井に、雨のあとだけ茶色いシミが出ます。ベランダの床を塗り直せば止まるのか、ほかに原因があるのか分かりません」
ベランダは毎日目にする場所なのに、水がどこで止められているのかは外から見えません。床の表面がきれいでも漏れることがあり、どこを直せばよいのか迷うのは自然なことです。
ここでは、ベランダの雨漏りの入り口になりやすい場所、新築時の基準でベランダがどう水を止める造りになっているか、排水口・オーバーフロー管・笠木から水が入る仕組み、漏れ方と外から見えるサインから入り口の候補を絞る考え方、住まい方が原因になる場合と自分でできる点検を、住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準と国土技術政策総合研究所の研究資料をもとに整理します。
- ベランダの雨漏りの主な入り口は、床の防水層、立上りと掃き出し窓の下、排水口とオーバーフロー管、笠木と手すり壁の上端、手すり壁と外壁の境目、後付けの金物の穴に分けて整理できる。
- 瑕疵保険を申し込む新築住宅の設計施工基準は、床に1/50以上の勾配を付け、防水層を開口部の下端で120mm以上、それ以外で250mm以上立ち上げることを求めている。
- シミの位置だけでは入り口を決められないため、漏れた日の雨の降り方や外から見えるサインと合わせて候補を絞ることができる。
- 国総研の住まい手向けの資料は、排水口が1か所ならオーバーフロー管を併設するよう求めており、オーバーフロー管をサッシの取付け位置より高く付けてサッシから漏水した事例も示されている。
- 布団の掛け外し、プランターや室外機の直置き、排水口のごみの放置など、住まい方が入り口をつくることがあり、置き方や掃除で避けやすくできる。
ベランダの雨漏りはどこから入るのか
ベランダの雨漏りの入り口とは、床の防水層、防水層の立上りと掃き出し窓の下、排水口とオーバーフロー管、笠木と手すり壁の上端、手すり壁と外壁がぶつかる部分、後から取り付けた金物の穴などのことです。どれか1か所だけとは限らず、入った水が別の場所まで伝ってから室内に出ることもあります。
この記事では、出典が「バルコニー」と呼ぶものも含め、ベランダとバルコニーを区別せずに扱います。出典の内容を引くときは、出典の用語のまま「バルコニー」と書きます。
主な入り口の整理
国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の国総研資料第975号「木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」は、造り手向けの第Ⅳ章(木造住宅の水分に起因する劣化リスク分析・同解説)で、バルコニーに関わる劣化の要因を15項目挙げています。ここではそれを、住まい手が目で追える場所ごとに6つに分けて整理します。この分け方は記事の側でまとめたもので、資料の区分そのものではありません。
| 入り口 | 水が入る仕組み | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 床の防水層 | 材料ごとの伸び縮み(線膨張率)の違いによる亀裂・破断、 物の落下や歩行などで加わる力による破損 | 国総研 第Ⅳ章・第Ⅱ章 |
| 立上りと掃き出し窓の下 | 防水層の四周の取合いからの浸入、 溜まった水が窓の下枠と立上りの取合いから入る | 国総研 第Ⅳ章、設計施工基準 第8条3項 |
| 排水口(ドレン)とオーバーフロー管 | ドレンまわりの防水層の張り掛かり不足や固定不良、 ごみの詰まりによる排水不良とあふれ | 国総研 第Ⅳ章、設計施工基準 第8条4項 |
| 笠木と手すり壁の上端 | 笠木の継ぎ手、笠木を留めるビスの貫通部、手すり壁の上端と笠木のすき間。 風抜きや飾りの開口、上端の保護材で通気層の出口をふさぐ納まりも要因に挙がる | 国総研 第Ⅳ章、設計施工基準 第8条5項 |
| 手すり壁と外壁がぶつかる部分 | 三方向の面が交わる三面交点にピンホールが生じやすい | 国総研 第Ⅳ章・第Ⅱ章 |
| 物干し金物など後付けの金物 | 受け材のない箇所への留め付けで、 貫通部や外装材の破損部から浸入する | 国総研 第Ⅳ章 |
表は主な入り口をまとめたもので、これ以外の場所から水が入ることもあります。ルーフバルコニーでは、雨水のほかに床裏の結露が不具合の要因として挙げられています。
床の防水層の亀裂・破断
第Ⅳ章は、材料ごとに温度による伸び縮みの割合(線膨張率)が違うことで、床の防水層に亀裂や破断が起きることを要因に挙げています。国総研の住まい手向けの第Ⅱ章(木造住宅の耐久性を向上させる家造りガイドライン)は、FRPなどの塗膜防水は熱膨張によって隅部が押されて破断しやすいとしています。
同じ第Ⅳ章は、床下地の留め付け不良や、下地の含水率が上がって膨らむことも要因に挙げています。人の歩行や、飛んできた物、植木鉢、はしごなどがぶつかる力で、防水層が破れやすいことにも触れています。
入った水は伝って別の場所に出る
第Ⅳ章は、手すり壁の上端と笠木の取合いにはすき間があって水が入りやすく、外壁との取合い部から入った水がここへ伝わってくることもあると書いています。水が入る場所と、水が表に出てくる場所は、離れていることがあるということです。
ベランダの床の真下にシミが出ていても、水の入り口が笠木や外壁との境目にあることもあります。入り口を考えるときは、シミの位置から少し視野を広げる必要があります。
わが家のベランダはどの型か
第Ⅱ章は、バルコニーの形式を次の3つに分けています。どの型かによって、水が回ったときに傷みやすい場所が変わります。
- 片持ち出し型(跳ね出し):外壁から外へ張り出す形。第Ⅱ章は、手すり壁と外壁の取合い部からの漏水が建物本体の構造部分の劣化につながることも少なくないとしています。住まい手向けの第Ⅲ章(木造住宅の長期使用に向けた屋根、外壁、床下のメンテナンスガイドライン)も、跳出しバルコニーを経年劣化リスクの高い部位としています。
- 階上型(ルーフバルコニー):下の階の屋根の上を使う形。第Ⅱ章は、数多く雨水浸入事例が示されているタイプとし、階下の居室に影響が及ぶこともあるとしています。
- 後付型:既製品のバルコニーを後から取り付ける形。
第Ⅱ章は、外壁から突き出すバルコニーは全体が外の気候にさらされるため、防水に一層の注意を払うよう求めています。
ベランダはどうやって雨水を止める造りになっているのか
ベランダの防水の基本とは、床に勾配を付けて水を排水口へ流し、床の防水層を壁際で立ち上げ、手すり壁は防水紙を上端で重ねて笠木でふさぐという、何段もの止め方の組み合わせです。瑕疵保険を申し込む新築住宅の設計施工基準が、その最低ラインを数値で定めています。
設計施工基準とはどんな基準か
住宅瑕疵担保責任保険 設計施工基準は、住宅瑕疵担保責任保険法人がそろえて定めた、瑕疵保険を申し込む新築住宅の設計と施工の技術的な基準です。対象には「雨水の浸入を防止する部分」が含まれ、第8条がバルコニーと陸屋根の防水を定めています。2009年7月に施行され、その後改正されてきました。国土交通省に掲載されている版は2019年12月施行のもので、保険法人が公開している2025年4月1日施行の改正版でも、この記事で取り上げる数値は変わっていません。
新築時の保険の基準なので、今あるベランダがすべてこの基準で造られているわけではありません。それでも、ベランダがどこで水を止める造りなのかを知る物差しになります。
2017年に公表された国総研の記者発表資料は、瑕疵保険の事故の中で防水事故の割合が9割を超えるとしており、第Ⅲ章も住宅瑕疵担保責任保険法人の情報として、瑕疵による事故のうち9割以上が雨漏り関係と紹介しています。どちらも2017年に公表された資料の記述で、最新の統計ではありません。新築で引き渡しから10年以内に起きた雨漏りの扱いは、別の記事新築の雨漏りは誰が直す?10年保証と瑕疵保険の手順で整理しています。
床の勾配1/50以上と防水層の種類
設計施工基準の第8条1項は、床に1/50以上の勾配を付けるよう定めています。防水材の製造者の施工基準で適切と認められる場合は、それによることもできます。
2項は、防水材を下地の変形や目違いに対して安定し、破断や孔あきが生じにくいものとし、工法を次のいずれかとしています。
- 金属板(鋼板)ふき
- 塩化ビニル樹脂系シート防水
- アスファルト防水
- 改質アスファルトシート防水
- FRP系塗膜防水(ガラスマット補強材を2層(ツープライ)以上。製造者の施工基準で認められる場合は1層以上)
- FRP系塗膜防水と、改質アスファルトシート防水またはウレタン塗膜防水の組合せ
国総研の第Ⅱ章は、木造住宅での向き不向きにも触れています。アスファルト系は木造にあまり適しておらず、合成ゴムシートは下地の動きに対して破損しにくく木造に適し、金属板の成形防水は平面が単純で小規模なものに適すとしています。
防水層の立上りの高さは資料で違う
床の防水層を壁際でどれだけ立ち上げるかは、資料によって示す値が違います。どれが正しいかを比べるものではなく、それぞれの資料の立場で示された値です。
| 資料 | 立上りの高さ | 位置づけ |
|---|---|---|
| 設計施工基準 第8条3項 | 開口部の下端で120mm以上、 それ以外の部分で250mm以上 | 瑕疵保険を申し込む新築住宅に求められる基準(最低ライン) |
| 国総研 第Ⅱ章(住まい手向け) | 250mm以上が標準、 掃き出し窓の下枠との取合いでも150mm以上は必要 | 耐久性を高める家造りのガイドライン |
| 国総研 第Ⅳ章(造り手向け) | 防水層の四周の立上りは150mm以上 | 劣化リスクの分析と解説 |
設計施工基準は、立上りの部分を防水テープやシーリングなどで止水するよう求めています。掃き出し窓の下は、設計施工基準と第Ⅱ章でほかの壁際より低い値が示されている場所で、床に水が溜まったときに水位が届くまでの余裕が小さい場所でもあります。
手すり壁の防水紙・笠木・ビス穴の止水
第8条5項は手すり壁について、防水紙を手すり壁の下端から張り上げて上端で重ね合わせること、上端は金属製の笠木を設けるなどして防水すること、笠木を釘やねじで留める場合は、釘やねじが防水層を貫く部分をあらかじめ防水テープやシーリングで止水することを定めています。外壁を通気構法にした場合は、手すり壁を外壁の通気を妨げない構造にすることも求めています。
国総研の第Ⅱ章は、手すり壁の上端は全長にわたって鞍掛状に防水テープを張ることが重要だとし、上端や外壁との取合いは伸長型の防水テープや成形した防水カバーで処理するよう示しています。
床の勾配、防水層、立上り、排水口、手すり壁の防水紙、笠木と、水を止める仕掛けが何段にも重なっているのがベランダです。裏を返せば、その段と段の継ぎ目のどこにでも、水が入る余地があるということです。
現場監督として工事に関わっていた頃、笠木は手すり壁の工事の最後にかぶせる部材でした。かぶせてしまえば、その下にある防水紙の重ねも、外壁とぶつかる角の処理も、完成した姿からは見えなくなります。
新築やリフォームでベランダの工事がある場合は、笠木を付ける前の手すり壁の上端がどう処理されているかを、工事中に施工者に確かめておくと後で安心です。写真に残してもらうのも一つの方法です。
漏れ方と外から見えるサインで入り口の候補を絞る
入り口の候補を絞る考え方とは、シミの位置だけで決めず、大雨の日だけ漏れるか、落ち葉の時期に漏れるか、外壁の汚れや笠木のぐらつきがあるかといった漏れ方とサインを重ねて、疑う場所の順番をつけることです。水は空洞の手すり壁や床裏を伝って動くことがあるため、シミの真上が入り口とは限りません。
シミの真上が入り口とは限らない理由
第Ⅲ章が示すとおり、手すり壁や床の裏は空洞です。笠木や外壁との境目から入った水は、その空洞の中を伝ったり、第Ⅳ章が書くように外壁の取合い部から笠木の取合いへ伝わったりしてから、どこかで表に出てきます。
そのため、ベランダの真下の天井に出たシミでも、入り口が床の防水層とは限らず、笠木や手すり壁と外壁の境目であることがあります。シミの位置は「この上のどこかから水が来ている」という手がかりにはなりますが、入り口そのものを示すわけではありません。
漏れ方・サインと先に確かめたい入り口
国総研の資料に書かれた経路や事例から言える範囲で、漏れ方やサインと、先に確かめたい入り口の候補を並べます。どれも確かめる順番をつけるための目安で、入り口を言い当てるものではありません。
| 漏れ方・サイン | 先に確かめたい入り口 | 根拠 |
|---|---|---|
| 大雨の日に漏れる | 排水口とオーバーフロー管がともに詰まり、 溜まり水が防水層の上端に達している可能性 | 国総研 第Ⅲ章 |
| 落ち葉や土埃の多い時期に漏れる | 排水口・オーバーフロー管の詰まり | 国総研 第Ⅲ章・第Ⅳ章 |
| 掃き出し窓の下枠のまわりが濡れる | 排水口の詰まりでできた水溜りが、窓の下枠と防水立上りの取合いから入っている可能性。 オーバーフロー管の口の高さ(サッシより高く付けてサッシから漏水した事例がある) | 国総研 第Ⅳ章 |
| 手すり壁まわりの外壁に汚れや白華が出ている | 手すり壁の目地や取合いからの浸水(不具合事例で見られたサイン) | 国総研 第Ⅸ章 |
| 笠木がぐらつく | 布団の掛け外しなどによる笠木の金具の緩み | 国総研 第Ⅲ章 |
| ルーフバルコニーの下の天井が濡れる | 雨水の浸入のほか、床裏の結露による事例もある | 国総研 第Ⅳ章・第Ⅸ章 |
| ベランダの真下の天井にシミが出る | 位置だけでは決められない。 床、立上り、笠木、手すり壁と外壁の境目のどこからでも伝ってくる | 国総研 第Ⅳ章・第Ⅲ章 |
白華は、外壁の表面に白い粉のようなものが浮き出る現象です。サインが見当たらなくても、中で水が回っていることはあります。
表に出る前に中が傷むことがある
第Ⅲ章は、手すり壁や床裏の空洞では日当たりの差で表面の温度に差が生じ、中空部で結露しやすく、そこに漏水が加わると木部が湿って劣化しやすいとしています。
不具合事例を集めた第Ⅸ章(木造住宅外皮の設計施工に起因する不具合事例集)は、バルコニーの不具合を「床下の漏水・結露」と「手すり壁の漏水と腐朽」の2つに分けて事例を載せています。その中には、ルーフバルコニーの床裏の結露で、下の階からの点検口がなかったために劣化の発見が遅れた事例もあります。
直す側から見ると、手すり壁や床の裏は空洞なので、水が入っても室内に出てくるまでに時間がかかります。天井にシミが見えた頃には、中の木部がすでに湿って傷んでいることがあります。
シミが小さいからと様子見を続けるより、手すり壁まわりの外壁の汚れや、笠木を手で押したときのぐらつきも合わせて確かめてください。外から見えるサインが重なっていれば、それだけ早めに相談する理由になります。
排水口とオーバーフロー管が雨漏りの原因になる仕組み
排水口が原因の雨漏りとは、ごみの詰まりで流れなくなった水が溜まって防水層の立上りの上端や掃き出し窓の下の取合いから入る漏れ方と、ドレンまわりの防水層の不具合から入る漏れ方のことです。国総研の住まい手向けの資料は、排水口を2か所設けるか、1か所ならオーバーフロー管を併設するよう求めています。
排水口が1か所ならオーバーフロー管を併設する理由
国総研の第Ⅱ章は、排水口は2か所設けることが必要で、1か所の場合は床防水の立上り部分にオーバーフロー管を併設するよう求めています。豪雨や排水口の目詰まりで雨水がプールのように溜まり、室内や壁の中へ漏れるのを防ぐためです。オーバーフロー管は、排水口から水が流れなくなったときに、溜まった水を外へ逃がすあふれ用の管です。
一方、設計施工基準は排水口の数までは定めていません。第8条4項が求めているのは、排水溝の勾配を確保することと、排水ドレンの取付け部で防水層を補強し、取合い部を止水することです。
オーバーフロー管の高さと掃き出し窓
第Ⅳ章は、オーバーフロー管をサッシの取付け位置より高く付けてしまい、サッシから漏水した事例を挙げています。水があふれ出る高さより先に窓の下まで水位が上がれば、あふれ用の管は役目を果たせません。
わが家のベランダで見ておきたいのは、オーバーフロー管の口が、掃き出し窓の下端より低い位置にあるかどうかです。排水口が1つでオーバーフロー管が見当たらない場合は、大雨の日に床に水が溜まっていないかを確かめておきます。
ドレンまわりの防水層の張り掛かり不足と固定不良
第Ⅳ章は、ドレン(排水口の金物)まわりでFRP防水層の張り掛かりが足りないことや、ドレンの固定が悪く、動くことで防水層がはがれたり亀裂が入ったりすることを要因に挙げています。排水口のまわりは、防水層と金物という性質の違う材料がつながる場所で、ごみがなくても水の入り口になることがあります。
物の陰の排水口は詰まりやすい
第Ⅳ章は、排水口がごみで詰まって水溜りができ、掃き出し窓の下枠と防水立上りの取合い部から漏水することがあるとし、物の陰に隠れた排水口はごみが溜まりやすいとしています。土埃や落ち葉で排水が悪くなり、水が長く滞留したりあふれたりすることも、要因として挙がっています。
第Ⅲ章も、排水口が1か所でオーバーフロー管もともにふさがると、大雨で溜まり水が防水層の上端の高さに達し、漏水の原因となることもあるとして、定期的な清掃を求めています。
笠木と手すり壁から雨水が入る仕組み
笠木まわりの雨漏りとは、手すり壁の上にかぶせた笠木の継ぎ手やビス穴、手すり壁と外壁がぶつかる三面交点から入った水が、空洞の手すり壁の中を伝って柱や壁の下地の木部へ回る漏れ方です。国総研の住まい手向けの資料は、手すり壁の上端と外壁の取合いを防水上最も重要な箇所としています。
手すり壁と外壁がぶつかる三面交点
第Ⅱ章は、防水上最も重要な箇所を「手すり壁の上端と外壁の取合いの防水納まり部分」としています。第Ⅳ章によると、手すり壁の上端(天端)と外壁が取り合う部分は三方向の面が交差するため、三面交点にピンホール(小さな穴)が生じやすく、木部の腐朽リスクが非常に高いとされます。これは、すべての形態のバルコニーに共通する要因として挙げられています。
同じ第Ⅳ章は、この部分に伸張性のある防水テープや、三面に成型した防水カバーを使うよう示しています。三方向の面が集まる角は、平らな面に張るテープだけでは処理しにくい場所だということです。
笠木の継ぎ手とビス穴
第Ⅳ章は、パラペット(屋上などの立上り壁)の笠木について、笠木から下の防水紙へ水が入るルートとして、笠木の継ぎ手のジョイントやシーリング部、笠木と外壁・内壁の取合い部、笠木を留める下地木部の継ぎ手を挙げています。下地へ水が入るルートとしては、笠木の取付け金物の釘の貫通孔、防水紙の三面交点のピンホール、ステープル(留め針)の孔など防水紙の傷を挙げています。
バルコニーの要因としても、笠木の継ぎ手と、笠木を固定するビスの貫通部が挙がっています。ビスは防水層を貫くため、止水材を詰めたり、ブッシングを使ったりする処理が示されています。設計施工基準の第8条5項も、笠木を釘やねじで留める場合は、防水層を貫く部分をあらかじめ止水するよう定めています。
手すり壁の飾り穴・風抜きと通気層の出口
手すり壁に風抜きや飾りの開口を設けると、入隅や三面交点、貫通部が増えると第Ⅳ章は指摘しています。手すり壁の上端に保護の面材をかぶせて、外壁の通気層の出口をふさいでしまう納まりも要因に挙がっています。通気層は、外壁の内側に入った湿気や水を外へ逃がす通り道です。
手すり壁の中は空洞で乾きにくい
第Ⅸ章には、片持ち出し式バルコニーの笠木の取合い部から漏水し、通気層の不具合で湿った状態が続いた結果、通し柱や耐力壁の合板などが劣化した事例が載っています。対策として示されているのは、笠木と壁の取合い部を伸張性の防水テープで三次元に面処理する方法です。
第Ⅳ章も、手すり壁にいったん雨水が入ると乾きにくくなるとし、通気構法の場合は入った雨水を外へ出せる排出口を設けるよう示しています。笠木まわりの雨漏りは、入った水が抜けずに残ることで傷みが進みやすい漏れ方です。
住まい方が原因になる場合と、自分でできる点検
住まい方による雨漏りとは、布団の掛け外しで笠木の金具がゆるむ、プランターや室外機の重さと伸び縮みで防水層が傷む、排水口のごみを放置して水があふれるといった、使い方が入り口をつくる漏れ方です。置き方や掃除、使い方を見直すことで避けやすくなります。
布団干しと寄りかかり
第Ⅲ章は、使い方による劣化リスクの一つ目に、手すり壁の上端で布団などの掛け外しを繰り返し、笠木の金具が緩んで漏水することを挙げています。
第Ⅳ章も、人の寄りかかりや布団干しで繰り返しかかる力によって、笠木や手すり子の取付け部の防水処理が傷むこと、物干し竿や重い植木鉢の落下で防水層が破れることを挙げています。そのうえで、木造の下地では防水層が一度傷むと、躯体の木部の劣化に発展するリスクが極めて大きいとしています。
プランター・植木鉢・室外機の置き方
第Ⅲ章は、プランターや植木鉢を防水層の上に直接置かず、敷板や人工芝を介して置くよう勧めています。室外機のように重さが一点にかかるものは、寒暖による伸び縮みと合わせて、防水層の劣化を早めるとしています。
重い物を置いた下は、ふだん目が届きません。プランターの下に排水口が隠れていれば、詰まりにも気づきにくくなります。
物干し金物などの後付け
後から物干し金物などを取り付けるとき、受け材(ねじを効かせるための下地の部材)のない箇所に留め付けると、ねじの貫通部や外装材の割れたところから水が入ることがあると、第Ⅳ章は指摘しています。手すり壁や外壁に穴をあける後付けの工事は、防水の層を貫く工事でもあります。
自分でできる点検
ベランダの床に立ってできる範囲で、次の順に見ていきます。
- 排水口とオーバーフロー管のまわりのごみや落ち葉、土埃を取り除く
- オーバーフロー管の口の高さと、掃き出し窓の下端の位置を見比べる
- 笠木を手で軽く押して、ぐらつきがないかを見る
- 床の防水層に、ひび、ふくれ、はがれがないかを見る
- プランターや室外機を置いている場合は、その下の防水層と排水口の状態を確かめる
- 手すり壁まわりの外壁に、汚れや白華が出ていないかを見る
- 気づいたことを、日付と天気とともに記録しておく
手すりから身を乗り出しての確認や、脚立に乗っての高所の作業はしないでください。見えにくい場所は無理に確かめず、記録した内容を専門家に伝えれば足ります。
自分でしないほうがよいこと
笠木の継ぎ目や外壁との境目にすき間を見つけると、市販のシーリング材で全部ふさぎたくなります。ただ、設計施工基準は外壁を通気構法にした場合に手すり壁を外壁の通気を妨げない構造にするよう求めており、第Ⅳ章も、入った雨水を外へ出す排出口を設けることや、通気層の出口をふさがないことを示しています。
すき間をすべてふさぐと、手すり壁の中の通気や、入った水の出口までふさいでしまうおそれがあります。継ぎ目からの漏れが疑われるときは、手すり壁の上端の防水処理まで確かめられる専門家に見てもらいます。
元現場監督が見る、ベランダの雨漏りが「直したのに止まらない」理由
ベランダの雨漏りが直らない理由の一つとは、入り口が床・立上り・排水口・笠木・手すり壁の境目に分かれているのに、見えている床だけを直してしまうことです。直す前に入り口を切り分け、工事の範囲と使える保険、公的な相談先を確かめてから進めます。
仕上がったベランダからは継ぎ目の処理が見えない
建てる側から見ると、ベランダは、床の防水、手すり壁の外装、笠木、サッシと、別々の工程で納めた部材が一か所に集まる部位です。それぞれの境目の処理は、次の部材がかぶさった時点で見えなくなります。仕上がったベランダを見て分かるのは表面の状態までで、継ぎ目の中の処理の良し悪しは、完成後の目視では判断しにくいところがあります。
床だけ塗り直しても止まらないことがある
直す側から見ると、ベランダの下の天井のシミを床の防水層のせいと決めて床だけを塗り直しても、入り口が笠木や手すり壁と外壁の取合いにあれば、雨漏りは止まりません。第Ⅳ章が15もの要因を挙げているように、ベランダの水の入り口は分かれています。床、立上り、笠木、排水口、掃き出し窓の下を切り分けてから直すことが、遠回りに見えて確実な進め方です。
直す前に確かめたいこと
- 工事の範囲:見積もりに書かれた工事が、床の防水層だけなのか、立上りや排水口、笠木、手すり壁と外壁の境目まで含むのかを確かめます。見積もりで見ておきたい項目は、見積もり段階で確認すべき10のポイントにまとめています。
- リフォームかし保険:住宅瑕疵担保責任保険協会のリフォームかし保険のページによると、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は5年間、それ以外の工事部分は1年間が保険期間で、工事着工後に保険法人の検査があります。使えるかどうかは、契約前に工事をする事業者に確かめます。
- 相談先:原因の説明や工事の内容が妥当か判断に迷うときは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルに相談できます。建築士の資格を持つ相談員が対応し、電話番号は03-3556-5147です。受付時間は公式ページで確かめられます。
- 突然の訪問:住まいの傷みを突然の訪問で指摘され、契約を迫られても、その場では契約しません。国民生活センターは2023年10月、屋根工事の点検商法のトラブルについて、突然訪問してきた業者に安易に点検させないこと、その場で契約しないことを呼びかけ、困ったときは消費者ホットライン188に相談するよう案内しています。契約してしまった後の手段は、リフォームのクーリング・オフは工事後も使える?8日の数え方と条件で整理しています。
建てる側と直す側の両方に立ってきて思うのは、ベランダの雨漏りは「どこが傷んでいるか」より先に「どこから入っているか」を決めないと、直す範囲を決められない部位だということです。表から見える床をきれいに仕上げても、境目の処理が残っていれば水はまた入ります。
著書『施工しない会社が、なぜ住宅業界を支配しているのか』では「雨漏りの原因の8割以上は施工不良にある」と書きました。前半で紹介した瑕疵保険の事故に占める雨漏り関係の割合とは別の数値ですが、この立場から見ても、取合いの多いベランダは、見えている床だけでなく境目の処理まで確かめたい部位です。
防水をやり直す見積もりを受け取ったら、床だけでなく、立上り、排水口、笠木、手すり壁と外壁の境目のどこまで見たうえでの工事なのかを、契約の前に業者に尋ねてください。答えがあいまいなら、その場で決めずに一度持ち帰る理由になります。
よくある質問
ベランダの雨漏りの原因は何ですか?
ベランダの雨漏りは、床の防水層、防水層の立上りと掃き出し窓の下、排水口とオーバーフロー管、笠木と手すり壁の上端、手すり壁と外壁がぶつかる部分、後から取り付けた金物の穴などから雨水が入って起こります。入り口は1か所とは限らないため、漏れた日の雨の降り方や外から見えるサインと合わせて候補を絞ります。
ベランダの真下の天井にシミが出たら、床の防水が原因ですか?
床の防水層が原因のこともありますが、笠木や手すり壁と外壁の境目から入った水が手すり壁や床の裏の空洞を伝い、ベランダの真下に出ることもあります。床だけを塗り直す前に、排水口、立上り、笠木、手すり壁の境目も含めて入り口を確かめます。
大雨の日だけベランダの下の部屋に雨漏りするのはなぜですか?
排水口やオーバーフロー管が詰まっていると、大雨のときにベランダに水が溜まり、防水層の立上りの上端や、掃き出し窓の下枠と立上りの取合いから中に入ることがあります。まず排水口とオーバーフロー管のごみを取り除き、それでも漏れるなら立上りや窓下の取合いを専門家に見てもらいます。
ベランダの排水口が1つしかなくても大丈夫ですか?
国土技術政策総合研究所の住まい手向けの資料は、排水口を2か所設けるか、1か所の場合はオーバーフロー管を併設するよう求めています。排水口が1つでオーバーフロー管もない場合や、オーバーフロー管の口が掃き出し窓の下端より高い場合は、大雨の日に水が溜まっていないかを確かめておきます。
笠木の継ぎ目を自分でコーキングしてふさいでもよいですか?
笠木の継ぎ目や外壁との境目をシーリングで全部ふさぐと、手すり壁の中の通気や、入った水の出口までふさいでしまうおそれがあります。継ぎ目からの漏れが疑われるときは、手すり壁の上端の防水処理まで確かめられる専門家に相談します。
ベランダにプランターや室外機を置くと雨漏りの原因になりますか?
プランターを防水層の上に直接置いたり、室外機のように重さが一点にかかる物を置いたりすると、寒暖による伸び縮みと合わせて防水層の劣化が早まることがあります。敷板や人工芝を間に挟み、排水口の近くに物を置かないようにします。
ベランダの防水工事をやり直すときに使える保険の仕組みはありますか?
リフォーム工事を対象にしたリフォームかし保険があり、雨水の浸入を防止する部分は5年間、それ以外の工事部分は1年間が保険期間で、工事着工後に保険法人の検査があります。保険を使えるかどうかは、契約前に工事をする事業者に確かめます。
まとめ
ベランダの雨漏りとは、床の防水層だけでなく、立上りと掃き出し窓の下、排水口とオーバーフロー管、笠木と手すり壁、手すり壁と外壁の境目、後付けの金物の穴など、複数ある入り口のどこかから水が入る現象です。
シミの真上が入り口とは限らないため、漏れた日の雨の降り方や、外壁の汚れ、笠木のぐらつきといった外から見えるサインを合わせて候補を絞ります。瑕疵保険を申し込む新築住宅の設計施工基準は、床の勾配を1/50以上、防水層の立上りを開口部の下端で120mm以上、それ以外で250mm以上とすることを最低ラインとしています。
排水口の掃除、プランターや室外機の置き方、布団の掛け外しや金物の後付けへの配慮は、今日からできる対策です。直すときは見えている床だけで判断せずに入り口を切り分け、判断に迷ったら住まいるダイヤルに相談します。
本記事で取り上げた設計施工基準、研究資料、公的機関の情報は、に確認したものです。ベランダの造りや傷み方は住まいごとに異なるため、個別の原因は現地で確かめる必要があります。


雨漏りの修理で伺う家で、ベランダの真下の天井にシミが出たので床の防水を塗り直したのに、まだ止まらないという相談を受けることがあります。ベランダは床だけでなく、壁際の立上り、排水口、笠木、手すり壁と外壁の境目と、水の入り口になり得る場所がいくつも集まった部位です。
シミに気づいたら、出た場所、出た日の天気、そのときのベランダの排水口の様子を書き留めておいてください。どこから入ったのかを絞り込むとき、その記録が大きな手がかりになります。