前編では、雨漏りや実家の老朽化を放置することのリスクと、それが家族全体に与える影響について語り合いました。
後編では、多くの方が最も不安に感じる「業者選び」にフォーカスします。雨漏り修理と遺品整理——一見まったく異なる業界ですが、実は「悪徳業者の手口」も「信頼できる業者の共通点」も驚くほど似ています。二人の専門家が現場で実際に目撃した事例を交えながら、業者選びの鉄則を徹底的に語ります。
村上 健司
住宅・不動産ライター/住まいトラブル解決専門家
千葉県を中心に住宅リフォーム・雨漏り・不動産売却の取材を長年にわたって行う。悪徳業者の実態と見分け方にも精通し、消費者側の視点で情報発信を続ける。
▶ 村上健司のプロフィールを見る
森田 あかり
整理収納アドバイザー
遺品整理・生前整理の業者取材経験多数。悪徳業者トラブルの相談を数多く受けてきた経験から、消費者が自分を守るための情報発信に力を注ぐ。
▶ 森田あかりのプロフィールを見る(外部サイト)雨漏り修理における悪徳業者の手口は、大きく3つのパターンに分類できます。
①「無料点検」を装った飛び込み営業:「近くで工事をしていて気になったので声をかけました」という口実で訪問し、屋根に上がって「このまま放置すると大変なことになる」と不安を煽る手口です。実際には問題がないか、あっても軽微な箇所を「崩壊寸前」のように説明し、即日・高額契約を迫ります。特に千葉では台風シーズン後にこういった業者が増えます。
②「安い見積もり→追加工事費の水増し」パターン:最初の見積もりを極端に安く出して契約を取り、工事が始まってから「見てみたらここも傷んでいた」「このままでは工事できない」と追加費用を請求する手口です。工事の途中で断ると「費用が発生する」と言われ、泣く泣く追加分を払うケースが多い。
③「コーキングだけ塗って終わり」の手抜き工事:本来は原因を特定して根本的に修繕すべきところを、表面にコーキング剤を塗るだけで「修理完了」と言い張る業者が存在します。数ヶ月後に同じ場所から再び雨漏りが発生しても「それは別の原因」と言い逃れされるため、費用だけ払って問題が解決しないという最悪の結果になります。
- 突然の訪問営業で「今すぐ直さないと大変」と急かしてくる
- 見積書の内訳が「一式」のみで詳細が書かれていない
- 「今日だけの特別価格」「今決めないとこの値段はない」と言う
- 会社の所在地・連絡先・建設業許可番号を提示しない
- 屋根の写真・動画を見せずに口頭だけで被害を説明する
- クレジットカードでの高額ローン契約を強く勧めてくる
驚くほど似ています。私がよく聞く遺品整理の悪徳業者の手口も3パターンです。
①「無料で回収します」から始まる高額請求:「不用品を無料で引き取ります」と宣伝しておいて、現地で「この量だと処分費がかかります」「電化製品は別料金です」と次々に費用を追加する手口。最初の電話での見積もりと実際の請求額が5〜10倍になることもあります。
②遺族の心理的弱みにつけ込む「急かし」:「この日程でないと次は1ヶ月後になる」「他にも依頼が入っているので今決めてほしい」と急かして、比較検討の時間を与えない手口。遺族は精神的に疲弊しているので、判断力が低下した状態で大きな契約をしてしまいやすい。
③「買い取り」を口実にした不当廉価買取:「価値のある物を高く買い取ります」と言いながら、実際には数百円〜数千円で強引に買い取り、後でフリマサイトやオークションで何十万円で売り出す業者もいます。遺族が混乱している状況を利用した手口です。
構造がまったく同じですね。「不安を煽る」「急かす」「情報格差を利用する」——この3点は悪徳業者の共通プレイブックと言っていいと思います。業界が違っても人間の心理を突く手口は変わらない。
特に注目したいのは「情報格差の利用」です。お客様側は「正しい費用相場がわからない」「どのくらいの工事が必要かわからない」という状態にある。その情報の非対称性をうまく突いて、言い値で契約させるわけです。だからこそ「相場を知っていること」が最大の防衛手段になります。
雨漏り修理業者を選ぶ際に私が絶対に確認すべきと言っているポイントをまとめます。
①建設業許可番号・一般建設業または特定建設業の許可:国土交通省または都道府県に登録された業者には許可番号があります。番号をもらって国交省のデータベース(建設業者・宅建業者等企業情報検索システム)で確認できます。許可のない業者は500万円以上の工事を請け負えないため、大きな修繕工事での契約は要注意です。
②「屋根診断の写真・動画」を必ず提示してくれるか:信頼できる業者は点検の際にドローンや屋根カメラで撮影した映像を見せてくれます。「屋根が傷んでいる」と口頭だけで言う業者は要注意。自分の目では確認できない場所だからこそ、客観的な証拠が重要です。
③見積書の「工事内訳」が細かく明示されているか:材料費・工賃・足場代・処分費などが項目別に明示されているか確認してください。「一式」と書かれているだけの見積書は論外です。
④アフターフォロー・保証期間の明記:工事後の保証内容(何年保証か、再発した場合の対応)が書面で示されるかどうかは信頼性の重要な指標です。口頭だけの「大丈夫ですよ」は無意味です。
遺品整理業者でも確認すべきポイントはほぼ同じです。特に重要なのが「一般廃棄物収集運搬業の許可」です。家庭から出る不用品を適切に処分するためには、各都道府県・市区町村の許可が必要です。この許可なしに廃棄物を回収している業者は、不法投棄のリスクがあります。不法投棄された廃棄物に依頼者の書類が含まれていた場合、個人情報漏洩の問題も生じます。
もう一つ重要なのが「遺品整理士認定協会」の認定資格です。すべての業者が持っているわけではありませんが、この資格を持つ業者は一定の倫理規定・業務基準を満たしているため、安心度が高まります。ホームページで確認するか、直接聞いてみてください。
- 必要な許可証・資格番号を自主的に提示してくれる
- 現地確認後に「詳細な書面見積もり」を出してくれる(電話口の口頭見積もりだけで終わらせない)
- 「すぐ決めなくていい」「他社の見積もりも取ってください」と言える
- 作業前・作業後の状態を写真・動画で記録・共有してくれる
- アフターフォロー・問い合わせ対応の窓口が明確になっている
「3社相見積もり」は正解ですが、ただ3社から見積もりをもらうだけでは不十分です。比較が意味を持つための条件があります。
条件①:同じ工事内容を依頼すること。業者によって「必要な工事の範囲」の認識が異なると、単純に金額比較ができません。最初の業者に「どの範囲の工事が必要か」を書面で明示してもらい、その内容を他社にも見せて同じ工事の見積もりを依頼することで、初めて公平な比較ができます。
条件②:「安いから良い」は禁物。3社の中で最も安い業者が必ずしも正直なわけではありません。安すぎる見積もりは手抜き工事のリスクがあります。「なぜこの価格なのか」を質問して、その説明が納得できるかどうかを確認してください。
条件③:見積もり後すぐに返答しない。相見積もりを取るためには「他社の見積もりも確認してから決めます」と伝えることが必要です。これで急かす業者はそれだけでアウトです。
遺品整理の相見積もりでも全く同じことが言えます。特に重要なのは「何をどこまで行うか」の範囲を統一することです。「不用品の搬出だけ」「清掃まで含む」「遺品の仕分け・梱包も含む」など、サービス内容が業者ごとに異なるため、金額だけ見てしまうと間違った比較になります。
また、遺品整理の場合は「買い取り込みの費用」と「買い取りなしの費用」を両方出してもらうことをおすすめします。買い取り額と処分費用の差し引きを透明にしてもらうことで、業者の誠実さがある程度わかります。
雨漏り修理の契約前に確認すべき最終チェックポイントをまとめました。一つでも「NO」があれば、契約は慎重にしてください。
【書類・資格の確認】
建設業許可番号の提示はあるか。見積書に会社名・住所・電話番号・担当者名が記載されているか。工事内容・材料・数量・単価が明記されているか。保証期間・保証内容が書面で示されているか。
【プロセスの確認】
現地調査の写真・動画を見せてもらえるか。なぜその工事が必要なのか説明を受けたか。工期・着工日・完工予定日が示されているか。追加工事が発生する場合の取り決めが書かれているか。
【契約の確認】
クーリングオフ(8日以内・書面)の説明を受けたか。支払い条件(着工前全額払いを求めていないか)を確認したか。訪問販売の場合は「特定商取引法に基づく表示」が契約書に含まれているか。
遺品整理の契約前チェックも補足します。
一般廃棄物収集運搬業許可証のコピーをもらえるか。遺品整理士などの資格保有者が対応するかどうか。現地見積もり後に書面見積もりを出してもらえるか(電話口だけで終わらない)。貴重品発見時の対応ルール(依頼者への報告義務)が契約書に含まれているか。作業前・作業後の写真撮影・共有を行うか。
これらは信頼できる業者なら当たり前に対応してくれることです。「そんな面倒なことは…」と渋る業者は、最初から候補から外してください。
千葉市内で取材した事例をひとつご紹介します。台風後に「近くで工事をしていた」という業者が突然訪問し、屋根の無料点検を申し出ました。屋根に上がった業者は「棟板金が飛んでいる、このままでは雨漏りどころか崩落危険がある」とスマホの写真を見せながら説明。「今日中に仮止めしなければ危ない」と言われ、50万円で即日契約してしまいました。
後日、別の業者に見てもらうと「棟板金は少し浮いているが、緊急性は低く数万円で直せる」という診断でした。消費者センターに相談したところ「訪問販売に該当するのでクーリングオフが可能」とわかり、書面でクーリングオフを申し出ることができました。この事例のポイントは「その場で決めないこと」「クーリングオフを知っていること」です。
私が直接相談を受けた事例では、遺品整理を「電話で30万円で引き受けます」と言った業者が、当日現地に来て「量が多すぎる」「特殊なものがある」と次々に追加費用を請求し、最終的に90万円を請求したというケースがありました。
依頼者の方は一人で対応していたため、業者の圧力に押され、その場でクレジットカードで支払ってしまいました。後から相談を受けたのですが、「30万円という書面での合意がない」ため法的に争うのが難しい状態でした。この事例から学べることは「電話の口頭見積もりは証拠にならない」「書面見積もりを必ず取る」ということです。
「台風直後で雨が入ってきている」「部屋が使えない」という本当の緊急事態もあります。そういう場合でも、最低限できることがあります。
まず「応急処置」と「本格修繕」を分けることです。緊急時はブルーシートによる養生・仮止めだけを依頼し(数万円が相場)、本格工事の業者は落ち着いてから選ぶ、という二段階アプローチが有効です。「今すぐ全部直す必要がある」という業者の言葉は、緊急性を利用した手口の可能性があります。
また、住まいの急なトラブルは「住宅瑕疵担保保険の相談窓口」や「国民生活センター」にも相談できます。「どの業者に頼めばいいか」の一般的なアドバイスをもらえる場合があります。
遺品整理も「葬儀後すぐに部屋を明け渡さなければならない」という状況があります。そういう場合でも、「まず家財だけ一時的に保管(コンテナ・倉庫)」という選択肢があります。整理自体は時間をかけてゆっくり行えばいい——その選択肢を持っておくだけで、急かされる状況が生まれにくくなります。
「急ぐ理由」を冷静に分析すると、本当に急がなければならないのか、業者に急かされているだけなのかが見えてきます。
もし悪徳業者とトラブルになってしまった場合の対処ステップです。
ステップ①:証拠を集める。見積書・契約書・領収書・業者とのやり取り(メール・LINE等)をすべて保存してください。口頭のやり取りは日時を記録しておきましょう。
ステップ②:クーリングオフの検討。訪問販売または電話勧誘販売による契約の場合、契約書面受取後8日以内なら書面(はがきの両面に記載)でクーリングオフが可能です。日付を記録するため、郵便局で「内容証明郵便」または「簡易書留」で送ることをおすすめします。
ステップ③:相談窓口への連絡。「消費者ホットライン(188)」に電話すると、最寄りの消費生活センターに案内してもらえます。建設業者のトラブルは「建設業法違反」として都道府県の建設業担当部署への申告もできます。
遺品整理のトラブルも基本的に同じです。「消費者ホットライン(188)」「国民生活センター」への相談が第一歩。悪徳業者の情報を相談センターに積み上げることで、同じ被害者を減らすことにもつながります。泣き寝入りせずに声を上げることが大切です。
また、SNSや口コミサイトへの情報共有も有効ですが、事実に基づいた冷静な内容にすることが重要です。感情的な誹謗中傷は逆に問題になることがありますのでご注意ください。
- 「急かされた瞬間」が最大の危険サイン——その場で決めない。信頼できる業者は比較検討の時間を与えてくれます。「今日決めないと」という言葉は、即座に断るくらいの気持ちで臨んでください。
- 書面が全て——口頭の約束に価値はない。許可証番号・見積書の内訳・保証内容・アフターフォロー条件、これらすべては書面で確認してください。「信頼している」「この人なら大丈夫」という感覚は証拠になりません。
- 相見積もりは「比較」ではなく「学習」のため。3社から話を聞くことで、正しい工事の範囲・相場・業者の誠実さが自然に見えてきます。高い業者が悪いわけでも、安い業者が良いわけでもありません。「説明の質」こそが信頼の指標です。
📖 この対談の前編・関連記事も読む
【前編】実家の天井シミを放置した末路——対談前編を読む → 【関連記事】実家の片付け前に確認したい家の状態チェックリスト(外部サイト)→※外部サイト(片付け・遺品整理の比較ナビ)に移動します


後編で取り上げる「悪徳業者問題」は、私が遺品整理の現場で本当に多く遭遇してきたテーマです。「業者に頼んだら言い値で何十万も取られた」という話は珍しくありません。読者の方に「このページを読んでいてよかった」と思ってもらえる情報をお届けします。