「住まいの解決広場」編集長・村上健司です。本日は、両メディアの運営会社であるVANGURD TALENT PARTNERS株式会社からのご紹介で、「上京住まいラボ」編集責任者・木村さやかさんと対談の場を設けることができました。「業種は違うけれど、住まい業界の情報格差をなくしたいという問題意識は同じ——だから絶対に話が合うはずだ」とのお言葉で引き合わせていただき、実際にお話を伺って確信しました。木村さんのご多忙の中快く対談を引き受けてくださったことに、心より感謝申し上げます。
まず、お互いが「住宅業界の情報格差」という問題意識を持つに至った経緯を聞かせてください。村上さんから話を始めていただけますか。
大手ハウスメーカーに勤めていたころ、ずっと違和感がありました。現場では「この工法は本当に大丈夫なのか」と思うことが何度もあるのに、営業は「当社の品質は業界最高水準です」と言い続ける。そのギャップに耐えられなくなって、消費者側の立場で情報発信を始めたのが「住まいの解決広場」の出発点です。累計15,000件の現場を見てきて一番痛感するのは、「消費者は情報がないから騙される」ということ。知識があれば防げた失敗が、あまりにも多い。
まったく同じ原体験があります。私自身が22歳で上京して、最初の賃貸でいわゆる「おとり物件」に引っかかったんです。ネットで見て気に入った物件を問い合わせたら「今日ちょうど申込が入ってしまって…」と言われ、気づいたら全然違う物件を契約していました。悔しくて不動産会社に入ったら、内側から業界の構造が見えて。上京者は土地勘がない、比較する時間もない、断るのが申し訳ないと感じる。その「弱さ」を利用するビジネスモデルが業界に存在することは事実です。だから私は「内側を知っている人間として正直に書く」と決めました。この経験は、著書『東京、なめてた。』でも赤裸々に書いています。
「消費者は情報がないから騙される。知識があれば防げた失敗が、あまりにも多い」
不動産会社選びの前に、内見で「建物の状態を自分の目で確認する」ことが、後悔しない住まい選びの土台になります。一級建築士・村上が実際の現場で使っているチェックポイントを公開します。
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1天井・壁のシミ・変色・膨らみ 黄ばみ・茶色い染み・クロスの膨らみは、過去の雨漏り・水漏れの痕跡サインです。真新しい塗装やクロス張り替えで隠されているケースもあるため、鼻を近づけてかび臭さがないかも確認します。特に最上階・角部屋・バルコニー直下は要注意です。
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2床のきしみ・沈み・傾き ゆっくり部屋の端から端まで歩き、きしむ・沈む感覚がある箇所を確認します。水回り(洗面所・トイレ・キッチン)周辺の床の沈みは、床下の腐食・シロアリ被害を示すことがあります。スマホの水平計アプリで床の傾きを確認するとより正確です(1°以上の傾きは要注意)。
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3窓サッシ周辺のカビ・変色・パッキン劣化 窓枠のゴムパッキンが黒ずんでいる・カビが生えている場合、結露・雨水浸入のリスクが高い状態です。北側・北西向きの窓は日照が少なく結露しやすいため重点確認を。アルミサッシは断熱性が低く、冬の結露が慢性化するケースも多いです。
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4水回り全般:臭い・流れ・水圧の確認 キッチン・洗面・浴室・トイレのすべての水を実際に流し、下水臭・カビ臭がないか確認します。水の流れが遅い場合は排水管の詰まり・劣化のサインです。蛇口の水圧も確認し、極端に弱い場合は配管の老朽化が疑われます。
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5外壁・基礎のひび割れ(内見前に外周チェック) 内見に入る前に必ず建物の外周を一周してください。外壁のひびは幅0.3mm未満(ヘアクラック)なら軽微ですが、幅0.3mm超・深さのあるひびは専門家調査が必要です。基礎コンクリートの縦・斜めのひびは構造的な問題を示す場合があり、最優先で確認すべきポイントです。
このリスト、仲介営業時代に知っていたら絶対お客様にお渡ししていました(笑)。私たち仲介担当者は宅建士の資格を持っていても、建物の構造や施工品質の専門家ではありません。契約・法律・告知事項のプロであって、「床下の腐食を見抜く目」は持っていない。だから誠実な担当者であっても、建物の隠れた問題を見落とすことはあります。このチェックリストを内見前にお客様にお渡しできていたら、もっと多くの方を守れたと思います。
重要なのは「これらは素人でもできるチェック」だということです。難しい道具も専門知識も不要です。歩く、嗅ぐ、見る、流す——この4つの動作だけで、深刻な問題の9割は「あれ?」と気づけます。そして「あれ?」と思ったら、その場で担当者に伝えてください。「この天井のシミは何でしょうか?書面で確認できますか?」と聞ける担当者が信頼できる担当者です。答えを曖昧にしたり、話題を変えたりする担当者は、それ自体が黄信号です。
⚠️ ホームインスペクション(住宅診断)の活用も選択肢に:自己チェックで「あれ?」と感じた箇所がある場合、国家資格「建築士」による住宅診断の依頼が有効です。費用は5〜8万円程度。中古マンション・中古戸建の購入を検討している場合は特に活用を推奨します。
建物の目利きができたとして、次に重要なのが「どの不動産会社に相談するか」です。元仲介営業の木村さやかが、内側から見た「信頼できる会社・担当者」の見分け方を語ります。
私が仲介会社に3年いた経験から、「ここが見分けるポイント」と断言できることが3つあります。1つ目は、最初の面談での「ヒアリングの深さ」。先輩から言われた言葉を今も覚えています——「ヒアリングを丁寧にしない担当者は、自分が売りやすい物件にお客さんを誘導する」。条件が曖昧なまま物件を大量に送ってくる担当者は要注意です。「どんな暮らしをしたいですか」から始まる担当者を選んでください。
2つ目は「囲い込みをしていないか」の確認です。囲い込みとは、自社に売主側・買主側の両方から手数料をもらう目的で、他の不動産会社に物件情報を開示しない慣行です。消費者にとって最悪の状況で、購入者は「この物件を紹介できる会社はここだけ」という状態に追い込まれます。見抜く方法は簡単で、「他社の物件も含めて比較して見せてもらえますか?」と最初に一言聞くだけです。「それは難しい」という担当者は囲い込みの可能性があります。
3つ目は「Googleクチコミの内容」です。件数だけでなく、担当者の名前が登場するクチコミが複数あるかどうかを見てください。「○○さんのおかげで」という個人名入りのクチコミは、会社ではなく「人として信頼された」証です。これは操作しようのないシグナルです。また、ネガティブなクチコミへのオーナー返信が誠実かどうかも重要な判断基準になります。
「担当者の名前入りクチコミ」という観点は、私にはなかった視点です。リフォーム業者選びでも「職人の名前が出てくるクチコミがある業者は良い」とは言いますが、不動産会社にも同じ基準が使えるんですね。「ヒアリングの深さ」「透明性」「個人への信頼」——私が優良業者を認定するときの基準と完全に一致しています。
村上さんが長年告発し続けてきた「中抜き構造」と、木村さんが内側で見た「囲い込み・おとり物件」——本質はどこでつながっているのでしょうか。
リフォーム・雨漏り修理の世界では、「一括見積もりサイト」や「紹介業者」がビジネスの中心になっています。施主が100万円を支払うと、紹介業者が30〜40万円を手数料として取り、下請け職人には60万円しか届かない。職人は赤字を防ぐために材料を安くするか工程を省くしかなくなる——これが「高いのに手抜き工事」が起きる構造的な原因です。そして消費者は「ネット上の評価が高い大手に頼めば安心」と思ってしまっている。でも実は、ネット上の評価は広告費で買われているものが多い。これは私の著書『施工しない会社が、なぜ住宅業界を支配しているのか』でも詳しく論じています。
不動産業界でも構造は同じです。大手ポータルサイトに掲載される物件情報には、実際には存在しない・すでに成約済みの「おとり物件」が混在します。掲載料・広告費を大量に投じた会社が上位に表示される。消費者は「上に出ているから良い会社」と思うけれど、実際は「広告予算が多い会社」というだけです。村上さんが言う「検索上位は危険」は、不動産ポータルにも完全に当てはまります。私の著書『東京、なめてた。』でも、上京初心者が陥りやすいこの罠を最初に取り上げています。
| 問題の種類 | リフォーム・雨漏り修理業界 | 不動産業界 |
|---|---|---|
| 情報の非対称性 | 施工品質・材料の良し悪しが消費者に見えない | 物件の本当の状態・市場価格が消費者に見えにくい |
| 中間業者の問題 | 紹介サイトが手数料30〜40%を中抜き。職人の取り分が減り品質低下を招く | おとり物件・囲い込みで消費者の選択肢を意図的に絞る |
| 評価の信頼性 | 広告費・掲載料でランキングが決まる | ポータルの掲載順位は広告費で決まる |
| 責任の所在 | 下請けへの丸投げで施工責任が曖昧になる | FC加盟店・大手チェーンは店舗ごとに対応差が大きい |
| 透明性の担保 | 自社施工・地場業者は逃げ隠れできない | SNS発信・担当者名入りクチコミが透明性の証拠になる |
| 消費者の対抗策 | 建設業許可を確認・自社施工かどうかを質問する | 「他社物件も見せてもらえますか?」の一言・Googleクチコミ確認 |
今日の対談のターゲットでもある「上京者・初めて東京で物件を探す方」が特に注意すべきことを、建築士と宅建士それぞれの視点から教えていただきます。
上京者の最大の弱点は「時間のなさ」と「土地勘のなさ」が重なることです。引越し日が決まっていて、内見のために何度も上京できない。その焦りを利用した「今すぐ決めないと他の人に取られる」という即決プレッシャーが横行します。私がお客さんに言い続けてきたのは「焦って決めた物件で後悔した人を何十人も見てきた。時間をかけて決めさせてくれる担当者を探してほしい」ということです。時間をかけることを「申し訳ない」と思う必要は一切ありません。
建築士の立場から言うと、上京者が見落としがちなのが「建物の築年数と旧耐震基準の問題」です。1981年6月以前に建築確認を取得した建物は「旧耐震基準」で、現行基準を満たしていない可能性があります。家賃が安い物件には築古が多い。安さの理由を必ず確認してください。また、東京は地域によって地盤の強さが大きく異なります。荒川・隅田川・多摩川沿いの低地は液状化リスクが高い地域もある。国土交通省の「重ねるハザードマップ」で事前確認することを強く推奨します。
「重ねるハザードマップ」は宅建士としても必須の確認ツールです。不動産会社はハザードマップを説明する義務(重要事項説明)がありますが、それは契約直前のこと。内見前に自分で確認しておけば、契約の場で焦らずに済みます。もうひとつ、上京者に絶対伝えたいのが「LINEやオンラインで相談開始できる会社を選ぶこと」です。地方にいながら複数社と連絡を取り、上京前に候補を絞れる会社が、上京者への対応力が高い会社です。
実はこれ、仲介営業にいたころから感じていたことがあります。「良い担当者ほど、建物の状態に正直」なんです。私が尊敬していた先輩は、内見中に「この壁のシミ、前の住人がどう説明しているか確認してきます」と自分から動いていました。反対に、早く契約を決めさせたい担当者は、建物の欠陥を見て見ぬふりをしていた。担当者の誠実さは、建物の問題点への向き合い方に如実に出ます。
それはリフォーム業者でもまったく同じです。「これは補修が必要ですが費用がかかります」と正直に言える業者と、「大丈夫です、問題ありません」と言い切る業者——後者の方が短期的に契約は取れますが、長期的に信頼を得るのは前者です。つまり「誠実な会社・誠実な担当者」というのは、短期的な利益より消費者の長期的な利益を優先できる人・組織のことです。そういう会社は、建物の不具合にも正直でいられる。
「良い担当者は、建物の欠陥から目を逸らさない。誠実さは、建物チェックへの向き合い方に表れる」
私がYouTubeやこのサイトで情報発信を続ける理由は、「知識の平等化」のためです。業界のプロが当たり前に知っていることを、消費者も知るべきです。TikTokで不動産業界の裏側を発信している会社が評価されているのも、まさに同じ理由だと思います。「知識を持つ消費者」が増えれば、不誠実な業者は淘汰されていく。業界の健全化は、消費者の賢さによって実現されるんです。木村さんのような専門家がメディアで正直に発信し続けることは、業界全体にとって本当に重要なことだと思います。
村上さんとまったく同じ思いです。私が「上京住まいラボ」で書き続けているのも「読んでいて本当によかった」と思ってもらえる記事を作ること——それだけです。不動産業界は今、SNSと口コミによって「本当に良い会社」が評価されるようになってきています。情報の非対称性は、まだ解消しきれていないけれど、着実に縮まっています。私たちのような発信者が増えることで、「知識を持つことが当たり前の消費者」が育っていく。今回、村上さんという建物のプロと対談させていただいたことで、「住まいを守るには建物と取引の両面から消費者が知識を持つ必要がある」という確信がさらに深まりました。本日は本当にありがとうございました。
おとり物件から始まった私の上京ライフ
宅建士・木村さやかが元仲介営業の本音で比較した、渋谷エリアの不動産会社比較記事です。上京者・初心者への対応力・Google評価・囲い込みリスクを5社横断で徹底解説しています。
渋谷の不動産会社比較を読む → ※ 外部サイト「上京住まいラボ」(木村さやか編集責任者)に移動します可能です。専門的な道具は不要で、「歩く・嗅ぐ・見る・流す」の4動作で深刻な問題の大半は気づけます。具体的には①天井・壁のシミ・変色、②床のきしみ・沈み、③窓サッシのカビ・劣化、④水回りの臭い・流れ、⑤外壁・基礎のひび割れを確認してください。「あれ?」と思った箇所は写真を撮り、担当者に書面での確認を求めましょう。
最初の面談でのヒアリングの深さです。「どんな暮らしをしたいか」から始まる担当者を選んでください。また「他社物件も含めて比較してもらえますか?」の一言で囲い込みの有無が確認できます。Googleクチコミに担当者名が登場するかどうかも信頼性の目安になります。
LINE・オンライン対応の会社であれば、地方在住のまま相談を開始できます。上京前に候補を絞っておくことで、上京後すぐに内見・契約まで進められます。オンライン対応かどうかは上京者への対応力を測る指標のひとつです。渋谷エリアのおすすめ会社については木村さやかの比較記事も参考にしてください。
1981年6月以前に建築確認を取得した建物は旧耐震基準にあたります。一律に避ける必要はありませんが、購入の場合は耐震診断・補強工事の実施履歴を必ず確認してください。建物の耐震性に不安がある場合は一級建築士への相談をお勧めします。
はい。リフォーム業界の「中抜き構造」と不動産業界の「囲い込み・おとり物件」は、消費者の情報不足につけ込む構造という点で本質的に同じです。対抗策も共通で、業界の仕組みを事前に知り、複数の視点から業者・会社を比較し、書面で確認することが重要です。
- 住まい選びは「建物の目利き」と「不動産会社選び」の両輪が必要——片方だけでは不十分です
- 内見チェック5点(天井シミ・床きしみ・窓サッシ・水回り・外壁)は専門家でなくても確認できる
- 良い担当者の見分け方は「ヒアリングの深さ」「囲い込みをしないか」「担当者名入りクチコミがあるか」の3点
- 業界の情報格差はリフォームも不動産も構造が同じ——「知識を持つことが最大の自己防衛」
- 上京者は特に「焦り」「土地勘のなさ」を利用されやすい。時間をかけて選ぶ権利を持つことを忘れずに
- 旧耐震基準・ハザードマップは物件契約前に必ず自己確認する
- 誠実な担当者は建物の欠陥にも正直——担当者の誠実さと建物への向き合い方は連動している
今回の対談は、運営会社であるVANGURD TALENT PARTNERS株式会社のご紹介によって実現しました。「住まいの業界で消費者のために正直な情報を発信している者同士だから、きっと話が合う」——そんなお言葉で引き合わせていただき、その通り、業種の垣根を超えた深い対話になりました。
建物のプロと取引のプロが同じテーブルで話すことで見えてきたのは、「住まいを守るには建物と不動産取引の両面から知識を持つ必要がある」という当たり前でありながら、なかなか言語化されてこなかった事実でした。この記事がその第一歩になれば幸いです。
村上さんの現場視点のお話は、私にとって本当に新鮮でした。「建物の目でも会社を選べる」という発想は、これからの上京住まいラボの記事にも取り入れていきたいと思います。この対談の機会をいただけて、心から感謝しています。ありがとうございました。
木村さんの「内側からの正直な発信」は、消費者にとって本当に価値があると確信しています。今後もこうした形でコラボできることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。
一級建築士 / 1級建築施工管理技士 / 雨漏り診断士
村上 健司


木村さんの経歴を伺って、改めて感じたのは「問題の構造はリフォームも不動産も同じだ」ということです。私が暴いてきた「中抜き・丸投げ・情報隠蔽」の構造は、不動産の「囲い込み・おとり物件・手数料の不透明さ」と本質的に同じです。業種が違っても、消費者が情報弱者にされているという根っこは一緒。だからこそ今日の対談に意味があると思っています。