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建設業の人手不足は現在どれくらい深刻ですか?
ピーク時から就業者が200万人以上減少し、55歳以上が3割超を占める一方で若手はわずか1割にとどまり、人手不足による倒産も過去最多を記録しています。
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職人不足は家の修理費用や品質にどう影響しますか?
職人の人件費高騰によりリフォーム費用が上昇し、人員不足による無理な工期や経験不足から、施工不良などの品質リスクが確実に高まります。
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なぜ建設業界には若者が集まらないのですか?
労働環境の課題に加え、多くの中小企業が採用のノウハウを持たず、「自社の魅力を若者に届ける手段」が不足していることが最大のボトルネックです。
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新卒採用代行(RPO)とはどのような仕組みですか?
採用戦略の策定から求人運用、応募者管理までを採用のプロに外部委託するサービスで、中小企業でも大手並みの採用力を得られる仕組みです。
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RPO会社選びで失敗しないためのポイントは何ですか?
単なる事務代行ではなく成果にコミットするパートナー型を選び、建設業界での実績や専門性を確認し、不透明な費用構造に注意して比較検討することが重要です。
はじめに:「腕のいい職人がいない」──これが、あなたの家の修理に直結している
住まいの解決広場をご覧の皆さん、編集長の村上です。
普段このサイトでは「雨漏り修理の業者選び」や「リフォームで失敗しないためのポイント」など、住まいにまつわる情報をお届けしています。しかし今回は、少し毛色の違うテーマで記事を書かせてください。
テーマは「建設業界の人手不足と、新卒採用の話」です。
「え、採用の話? うちのサイトの読者には関係ないでしょ」──そう思われた方、ちょっと待ってください。実はこの問題、あなたが将来リフォームを頼むとき、雨漏り修理を依頼するとき、その「工事品質」と「費用」に直結する問題なんです。
私は大和ハウス工業と積水ハウスで合計22年間、現場監督として15,000件以上の現場を見てきました。その経験から断言します。良い住宅を守るには、良い職人が必要。そして今、その良い職人が、急速にいなくなっている。
この記事では、建設業界の人手不足がなぜ深刻なのか、それが住宅オーナーである皆さんにどう影響するのか、そして建設会社が「新卒採用」で根本的に変わるために今注目されている新卒採用代行(RPO)という仕組みについて、現場を知る一級建築士の目線で解説していきます。
1. 数字で見る「建設業の人手不足」──想像以上に深刻な現実
まず、現状を正確に把握しましょう。感覚論ではなく、データで見ていきます。
就業者数:ピーク時から200万人以上が消えた
国土交通省の統計によると、建設業の就業者数は1997年のピーク時に685万人いました。それが2022年時点で479万人。実に200万人以上が建設業界から姿を消しています。
約30%の減少です。しかも、この減少はまだ止まっていません。
高齢化:55歳以上が3割超、29歳以下はわずか1割
建設業就業者の年齢構成を見ると、55歳以上が全体の約36%を占めます。一方、29歳以下はわずか約12%。全産業平均では29歳以下が16%程度ですから、建設業の若者比率の低さは際立っています。
※「今現場を支えているベテラン層が10年以内に大量退職し、それを引き継ぐ若手がほとんどいない」という構造的危機を示しています。
人手不足倒産:2025年は過去最多の427件
帝国データバンクの調査によると、人手が足りないことを直接の原因とする「人手不足倒産」は2025年に427件を記録し、3年連続で過去最多を更新しました。そのうち建設業は113件で業種別トップ。しかも倒産企業の約77%が従業員10人未満の小規模企業です。
2026年1月時点でも、建設業で正社員が不足していると感じている企業は約7割にのぼり、状況は改善の兆しを見せていません。
さらに日本経済新聞の調査では、大手・中堅の建設会社の約7割が「2026年度内は大型工事を新規受注できない」と回答しているとの報道もありました。仕事はあるのに、人がいない。これが今の建設業界の現実です。
2. 「職人がいない」が、あなたの家の修理費を押し上げている
ここまでは「建設業界の話」でした。では、これが私たち「住まいの解決広場」の読者──つまり住宅オーナーの皆さんにどう関係するのか。
修理費・リフォーム費の高騰
建設業界で人手が不足すると、職人の賃金は上昇します。実際、全建総連東京都連合会の調査によれば、建設業の職人の月額賃金は9年間で約4万円増加しています。公共工事設計労務単価も2012年から毎年上昇を続けています。
これは当然、皆さんが依頼する雨漏り修理やリフォームの費用にも反映されます。「なんか最近、リフォームの見積もりが高くなった気がする」──それは気のせいではありません。人件費が上がっているからです。
工期の長期化と品質リスク
人手不足は価格だけでなく、工事の品質にも影響します。
本来3人で行うべき作業を2人でやらざるを得ない。本来1週間かかる工事を「この日しか空いていないから」と3日で無理に仕上げる。あるいは、経験の浅い職人が、ベテランの指導なしに一人で施工する。
こうした状況が常態化すると、施工不良のリスクは確実に高まります。私が現場監督時代に口酸っぱく言っていたのは「品質は人で決まる」ということ。技術力のある職人が、適切な人数で、十分な工期をもって施工する。この当たり前のことが、今まさに崩れようとしているのです。
「選べる業者」がさらに減る
人手不足倒産の77%は従業員10人未満の小規模企業です。地域密着で腕のいい小さな工務店や修繕業者が、人が確保できないという理由で廃業していく。
するとどうなるか。競争が減り、残った業者の言い値で工事をお願いするしかないという状況が生まれます。あるいは、本サイトでも警告し続けている「紹介サイト経由の中抜き構造」がさらに幅を利かせるようになる。いずれにしても、住宅オーナーにとってマイナスです。
3. なぜ建設業界に若者が来ないのか──元現場監督として痛いほどわかる理由
では、なぜ建設業には若い人が来ないのか。私は22年間この業界にいた人間として、正直に申し上げます。理由は、業界側にある。
「3K」イメージは、残念ながら半分本当
「きつい・汚い・危険」──建設業の3Kイメージは古いとよく言われますが、正直なところ、現場によってはまだ該当する部分があります。夏場の炎天下での作業、冬の凍えるような高所作業。これらは事実としてあります。
もちろん、ICT化やドローンの導入で環境が改善されている現場もあります。ただ、特に中小零細の現場では、まだまだアナログな部分が多く残っているのが実情です。
長時間労働と「週休1日」の壁
厚生労働省の統計では、建設業の年間総実労働時間は全産業平均を大きく上回っています。週休2日が確保できていない会社も少なくない。今の若い世代がワークライフバランスを重視するのは時代の変化として当然のことであり、ここに適応できない企業は選ばれません。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されましたが、制度ができても現場の体質がすぐに変わるわけではありません。
そもそも「採用活動」ができていない
ここが今回の記事で最も伝えたいポイントです。
大手ゼネコンやハウスメーカーは、採用専門のチームを持ち、合同説明会に出展し、インターンシップを実施し、SNSで情報発信をしています。新卒採用に年間数千万円の予算をかけている企業も珍しくありません。
一方、建設業の主役である中小企業はどうか。
多くの場合、社長や総務担当が片手間で採用活動をしています。求人票をハローワークに出す。たまに求人誌に載せる。それだけ。ナビサイトの運用もSNSでの魅力発信もしていない。そもそも「採用のやり方がわからない」のです。
私が現場監督をしていた頃も、協力会社(下請け業者)の社長から「若い子が欲しいけど、どう募集したらいいかわからない」「求人出しても応募が1件もない」という相談を何度も受けました。
技術はある。仕事もある。ただ、「自社の魅力を若者に届ける手段」を持っていない。これが、中小建設業の採用における最大のボトルネックです。
4. 「新卒採用代行(RPO)」という仕組みを知ってほしい
こうした状況を打破する一つの選択肢として、今、建設業界でも注目され始めているのが「新卒採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)」という仕組みです。
RPOとは何か
簡単に言えば、企業の新卒採用業務を、採用のプロフェッショナルに外部委託するサービスです。
具体的には以下のような業務を代行してくれます。
- 採用戦略の策定(どんな人材を、どの媒体で、どのように集めるか)
- 求人原稿の作成・ナビサイトの運用
- 応募者の管理・スクリーニング
- 説明会やインタビューの企画・運営
- 内定者フォロー
つまり、採用専門チームを持てない中小企業でも、「大手並みの採用力」を手に入れることができるわけです。
なぜ今、RPOが注目されているのか
背景には、新卒採用市場の激変があります。
今の新卒採用は、ただ求人を出して待つだけでは人が来ません。ナビサイトでの露出最適化、ダイレクトリクルーティング、SNS採用、動画活用──手法が多様化・高度化し、もはや「採用は専門職」と呼んでいいほど複雑になっています。
建設業界の中小企業がこれらを自前でカバーするのは、現実的に不可能です。だからこそ、「採用のプロ」に任せるという発想転換が必要なのです。
住宅業界の経験から見たRPOの価値
私自身、大手ハウスメーカー時代に「人材の質が施工品質を決める」ことを身をもって体験してきました。
優秀な若手が入社してくると、現場が活性化します。ベテランも「この若い子に技術を教えたい」とモチベーションが上がる。結果として、工事品質が向上し、お施主様(施工を依頼したお客様)の満足度も上がる。好循環が生まれます。
逆に、採用がうまくいかず人が足りない現場は、常に余裕がなく、ミスが増え、クレームが増え、人がさらに辞めていく。悪循環です。
採用は「コスト」ではなく「投資」です。そして、その投資効率を最大化するためにRPOというプロの力を借りる。これは決して「手抜き」ではなく、経営判断として合理的な選択だと考えています。
5. RPO会社の選び方──「業者選び」のプロとして伝えたいこと
ここからは、普段リフォーム業者や雨漏り修理業者の選び方を発信している私だからこそ伝えられる視点で、RPO会社選びのポイントをお話しします。
実は、「良い業者の選び方」の本質は、住宅業界でも採用業界でも同じなんです。
- リフォーム:言われた箇所にコーキングを打つだけの対症療法
- RPO:言われた通りにデータを管理するだけの事務代行
- リフォーム:原因を調査し、再発しない修理を提案する根本解決
- RPO:採用課題を分析し、戦略設計からコミットするパートナー
ポイント①:「事務代行」なのか「成果にコミットするパートナー」なのか
これは雨漏り修理業者の選び方と全く同じ構造です。
修理業者にも2種類あります。「とりあえず言われた箇所にコーキングを打つだけの業者」と「雨漏りの根本原因を調査し、再発しない修理を提案してくれる業者」。前者は安くても意味がない。
RPOも同じです。「とりあえず応募者データを管理するだけ」の事務代行型と、「企業の採用課題を分析し、母集団形成から内定承諾まで戦略的に設計する」パートナー型。成果にコミットしてくれるかどうかが分かれ目です。
ポイント②:実績と専門性で判断する
住宅業界でも「実績棟数」や「施工事例」を確認することを推奨しています。RPO会社も同じで、建設業界での採用実績があるかどうかは重要な判断基準です。
建設業は特殊な業界です。求職者の動機、媒体の特性、訴求ポイントなど、他業種とは異なる部分が多い。業界を理解したうえで支援してくれるRPO会社を選ぶべきです。
ポイント③:「紹介マージン」構造に注意
本サイトで繰り返しお伝えしている「紹介サイトの中抜き問題」。これはRPO業界にも存在する可能性があります。費用体系が不透明な会社、何をどこまでやってくれるのか曖昧な会社には注意してください。
見積もりを取り、サービス内容を明確に確認し、複数社を比較する。これは業種を問わず、業者選びの鉄則です。
6. 建設業の未来のために──新卒採用の「戦略化」が急務
最後に、少し大きな視点でお話しします。
建設業界の人手不足は、単に「求人を出せば解決する」という段階をとうに過ぎています。ICTの導入や外国人材の活用ももちろん重要ですが、国内の若い人材に「この業界で働きたい」と思ってもらうことが、最も根本的で持続可能な解決策です。
そのためには、採用活動そのものを「戦略」として捉え直す必要があります。
自社の強みは何か。どんな働き方ができるのか。入社後にどんなキャリアが描けるのか。これらを若者に「伝わる言葉」と「伝わる手段」で届ける。これが今の採用に求められていることです。
そしてそれを実現するための手段として、新卒採用代行(RPO)の活用は非常に理にかなっています。
新卒採用代行サービスについて、各社の特徴や費用感を比較した情報は、以下のサイトが参考になります。実際にRPO各社を調査・比較した上で、建設業を含む様々な業界向けにわかりやすく整理されています。
参考:新卒採用代行のおすすめは?失敗しないRPO会社比較ガイド
上記のサイトでは、新卒採用代行の費用相場、事務代行型と戦略パートナー型の違い、失敗しないための選定基準などが詳しく解説されています。RPO導入を検討している建設会社の経営者の方には、一読をおすすめします。
おわりに:「良い家」を守るために、「良い人材」を育てる
私は住まいの専門家として、「家を守るのは人だ」と常々お伝えしてきました。
どんなに良い建材を使っても、施工する職人の腕が悪ければ意味がない。どんなに立派な設計図があっても、それを実現する技術者がいなければ絵に描いた餅。
建設業の人手不足は、私たち住宅オーナーにとって「対岸の火事」ではありません。
今、建設業界の中小企業が新卒採用に本気で取り組み、若い人材を迎え入れ、技術を伝承していくこと。それが5年後、10年後の「施工品質」を守り、ひいては私たちの「住まいの安心」を守ることにつながります。
普段とは少し違う角度の記事になりましたが、住宅と建設業界は切っても切れない関係にあります。業界の未来を考えることは、住まいの未来を考えることと同義です。
この記事が、建設業に携わる方々、あるいは住宅業界の現状に関心のある方々にとって、何かの参考になれば幸いです。
